2002年1月7日

"Queenslander" の歴史と発展

'Queenslander' は、初期の入植者のみすぼらしい掘っ立て小屋に始まり、1930年代以前の方形屋根のバンガロー・ハウスの登場に至るまで、さまざまな知恵と工夫が加えられ発展を続けてきたクイーンズランドの特有の木造住宅の建築様式である。
他の州に比べて木材が手に入りやすかったこと、増大する入植者の住宅需要に早急に対応する必要があったことなどから、政府も短期に建築可能な木造の住宅を奨励した。
クイーンズランドでは1850年代には既に製材所が建設され、住宅建設に必要な木材が豊富に供給される体制が整っていた。
鉄板で葺かれた屋根は 'Queenslander' の一つの特徴だが、これは熱帯の風雨に瓦より抵抗力のある材料として、遥か遠くから運ばれた。

木材は安価な材料ではあったが白蟻の侵入を受けやすい。この白蟻への対策が画期的な工夫を生む。
白蟻の有無を目で監視できるように家全体を支柱で持ち上げ、支柱には上部構造へ白蟻の侵入を防ぐために鉄板でキャップが被せられた。
支柱で持ち上げられた家は、通風がよく多湿な気候に適している、床下を洗濯場、物干し場や倉庫などの多目的スペースに利用することで上部に余分なスペースが生まれるなどの波及効果をもたらした。
一方、クイーンズランドの住宅は、一般的にその地域の風向きに関係なく道路に向いて建てられていたが、これは、熱伝導性の高い鉄と絶縁性の低い木材という材料上の特質と重なったとき、室内の暑さを悪化させる要因となる。彼らは家の向きを風向に合わせる方法でこれを解決した。
風通しをよりよくするため窓やドアは開け放たれたが、昆虫や害虫の侵入を少しでも少なくするため、それらの棲息する木や藪が家の周りから取り払われることもあった。
家が地面より高くなったため周囲から覗き込まれることが少なくなったことで、より開放的な生活が可能となり、大きく突き出した屋根の下にベランダが設けられた。
ベランダの出現は、暑い室内から脱出して、そよ風に吹かれながら椅子やテーブルで食事をしたりお茶を飲んだりという、クイーンズランド特有の新しいライフ・スタイルを生んだ。

1930年代に建てられた典型的な 'Queenslander'

'Queenslander' は、その後いろいろな要素が付け加えられ、磨き上げられ、さまざまに飾り立てられて、1890年代までには既にクイーンズランドの風土にマッチした最高のレベルまでに達っしていたものと考えられる。
ビクトリア(2世)朝の繁栄の時代において、完璧な形で建てられた 'Qeenslander' はそこに住む主人の社会的・経済的成功の証し(あかし)となり、Queenslander のステータス・シンボルとまでなったのである。

"Queenslander" のいろいろなスタイル
次のイラストは、初期の掘っ立て小屋的なスタイルから第二次世界大戦後の復古調の大型住宅まで、Queenslander の発展と変遷の様子を描いたものだが、必ずしも矢印のとおりに流れていったものではなく、途中からいろいろな形で機能的あるいはデザイン的な変形が加えられ、多数の発展形が生み出されていったと考える方がいいだろう。
(画像は、クインズランド博物館のホームページから拝借した。)


初期の基本形
(1820s - 1930s)


切妻屋根
(1820s - 1930s)



方形屋根
(1870s to 1930s)

非対称の方形屋根
(1870s - 1930s)

切妻側のベランダ
(1910s - 1930s)



バンガロー
(1870s - 1930s)


非対称のバンガロー
(1900s to 1930s)


戦後のリバイバル
(???? - 1980s)

《次へつづく》

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